見守りDXが拓く、こどもの放課後支援の未来についてまとめました
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深刻化する「小1の壁」と学童保育の持続可能性をどう高めるか
この度、BPS株式会社様にご協力いただき、2025年8月に地方議員の皆様を対象とした「学童・児童館・図書館に電話しなくてもいい仕組み 現場も親も喜ぶ見守りDX」に関する勉強会を開催いたしました。本レポートは、多忙によりご参加いただけなかった議員の皆様へ、現代の子育て支援における社会課題と、その解決策としてのデジタルトランスフォーメーション(DX)の可能性をまとめたものです。
地域の課題解決に向けた具体的な一歩として、協力企業との個別対話の機会を持っていただければ幸いです。
1. 意外な盲点:小学校入学後に直面する「時間の壁」
多くの子育て世帯が直面する「小1の壁」は、単なる子どもの生活スタイルの変化以上の、深刻な社会課題です。
保育園では朝7時30分から夜19時頃まで(最大11時間)預かりが可能であったのに対し、小学校では概ね8時から14時頃まで(6〜7時間)となり、延長制度もありません。この時間差によって、親が仕事から帰宅するまでの間、子どもを誰が見るかという新たな問題が生じます。
親族が近くに住んでいない場合、実質的な選択肢は**「学童」を利用するか、「仕事の調整」を行うか**の二択になることが多く、仕事を調整することは、給与やキャリアとのトレードオフを生じさせます。
また、単に「小1の壁」を乗り越えれば良いわけではなく、子どもが複数いる家庭では、片方が小学生になると、まとめてお迎えに行くことが難しくなるなど、「小2の壁」の存在も指摘されています。親御さんからは、低学年の子どもを数時間も家で留守番させることへの不安の声や、公文などの習い事がある日に「きちんと学童に行っているか不安」といった安全管理への懸念も上がっています。
2. 社会インフラとしての学童保育が抱える三つの深刻な課題
放課後児童クラブ(学童)は共働き世帯の増加によりニーズが高まり、政府目標の受け皿152万人はほぼ達成済み(151.9万人)ですが、待機児童も依然として発生しています。この重要な社会インフラは、現在、以下の三つの課題により質の維持が困難になっています。
- 指導員不足と低待遇: 指導員の平均年収は289万円と、保育士(370万円)や全産業平均(426万円)と比較して低水準にあります。業務内容が子どもの育成、安全管理、保護者対応、記録業務など多岐にわたるにもかかわらず、給与水準が低いため、人が集まらない職種になってしまっています。結果、非常勤の割合が7割を超えるなど、人材の安定確保が難しくなっています。
- 大規模化の進行: 国が定める基準は1拠点40名以下ですが、全体の4割が41名以上となっており、100名を超える大規模学童も多く存在します。大規模化すると指導員が多く必要となりますが、人材不足のため十分な配置ができず、結果的に学童の質が低下する恐れがあります。
- 圧倒的な予算不足: 学童(利用者152万人、予算1400億円)は、保育園(利用者271万人、予算2.5兆円)と比較すると、予算規模は約1/17程度にとどまっています。予算の少なさは、指導員の待遇改善や設備投資を妨げる要因となっています。
3. ICT化(DX)による業務改善とコスト削減の可能性
学童側の多岐にわたる業務のうち、特に「電話対応」や「記録業務」は、子どもの安全管理を「ながら」で行うことが難しく、指導員の負担を高めています。
現在、学童のICT導入率は全体の4割程度であり、約25,000施設のうち15,600施設は何も導入されていません。しかし、保護者への連絡や入退室通知のシステム化は、学童の本質である「子どもを育成する」「安全管理」に注力するための優先度の高い解決策とされています。
導入難易度が「低」く、学童職員、保護者、自治体職員すべてに負担軽減のメリットがあるのが、入退室記録・管理システムです。
ICTを導入し、業務を効率化することで、指導員がコア業務に専念できる環境を整備し、結果的に学童の質の維持・向上を図ることが可能となります。
4. 導入事例が示す保護者の安心感と現場の業務負荷軽減
BPS株式会社様が提供する「入退くん」(QRコードを利用した入退室管理システム)は、全国100を超える学童・放課後施設で導入実績があり、自治体採用実績もあります。
導入自治体 | 導入の背景と効果(事例) |
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東京都江東区様 | 区内64カ所の学童保育で導入され、約1万5,000人の児童が利用。顔写真付きの通知が届くことで、利用者アンケートで8割近くの方が安心感を得ていることが分かりました。また、緊急時の一斉送信機能が非常に役立っています。 |
群馬県下仁田町様 | デジタル化に慣れていないスタッフも、子どもたちがすぐに慣れたことで負担感が減少。業務負荷は以前の3割程度まで軽減したと感じています。手作業による日ごと、月ごと、年間ベースの集計作業がごっそりなくなりました。 |
千葉県印西市様(児童館での導入) | 元々、小さなお子様を抱えた保護者の記入手間や職員の手作業による集計が負担でした。QRコード化により、職員が小さな子どもから目を離す時間が減り、保護者からも入退室通知と画像添付による安心感が好評です。 |
これらの事例から、ICT化は単なる業務効率化に留まらず、保護者の安心感を高め、親子のコミュニケーションツールにもなり得るという複合的な成果が確認されています。
5. 低コストでの導入が拓く持続可能な仕組み
「入退くん」は、初期費用は0円で、月額利用料金は3,000円〜と、低コストで導入できる仕組みです。年間予算の試算では、例えば300名の利用者規模の場合、年間コストの目安は180,000円(50円*300名*12ヵ月)となります。
このコストに対し、業務削減効果は非常に大きいです。例えば、時給1,500円で計算した場合、60名の学童で入退室時に全員へ電話対応をしていた業務をシステムに置き換えることで、年間で840,000円のコスト削減が見込まれます。また、入退室の記録業務に1日30分かけていた場合でも、年間210,000円の削減効果が期待できます。
このシステムは、学童だけでなく、未就学児の来館受付をデータ化したい児童館や、職員のタイムカード代わりに市職員の勤怠管理機能として利用するなど、多岐にわたる公共施設での活用事例があります。
6. 地域課題解決に向けた具体的な対話のご提案
ICT化は、学童現場の負担を軽減し、保護者の安心感を高めることで、子育て支援の質の向上と、持続可能な地域運営を実現するための重要な一歩です。
導入にあたっては、まず現状の運用や課題、学童のICT化に関する意向を把握し、予算についても確認することが重要です。
また、質疑応答の時間では、システムの単体導入実績や子供食堂への活用事例、さらには複数の経営主体の施設間での連携の可否など、実践的な運用に関する具体的な質問が多く寄せられました。BPS株式会社様は、これらの複雑な自治体ニーズにも柔軟に対応できる体制を整えています。
協力企業であるBPS株式会社様は、規模に応じた導入プロセス(小規模の場合はまず1拠点のみトライアル導入)や、入札・随意契約といった形式への対応など、自治体の状況に合わせた柔軟な提案が可能です。
地域の未来を担う子どもたちのための放課後支援をより強固なものとするために、ぜひ一度、BPS株式会社の大場様をはじめとする専門家との個別面談の機会をご検討ください。面談では、貴自治体の具体的な課題や、現状の入退室運用、学童ICT化に関する意向を深く伺い、低コストで最大の効果を生むためのオーダーメイドな解決策について詳細にご提案させていただきます。
この面談を通じて、貴自治体におけるDX推進の実現可能性と、現場及び市民の皆様に提供できる具体的な安心について、共に議論を深めていけることを心より願っております。