超充実のフィンランド子育て支援|その実情と課題とは

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フィンランドは、子育て支援の先進国として世界的に知られており、充実した制度と手厚いサポートで、子育て世代を支える環境が整っています。しかし、近年のフィンランドでは予想外の事態が起きていることをご存じでしょうか?フィンランドにおいても出生率が急激に低下し、少子化が進んでいるのです。

この記事では、フィンランドの子育て支援制度の具体例を紹介しながら、なぜ充実した支援があっても出生率が下がってしまうのか、その実情と課題を探ります。そして、フィンランドの事例から日本が学べることや、効果的な子育て支援のあり方について考えていきましょう。

フィンランドの手厚い子育て支援の具体例

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まずは、フィンランドの子育て支援制度の具体例を見ていきましょう。その充実ぶりに驚かされるこはずです。

ネウボラ|家族全体を支える総合サポートシステム

フィンランドの子育て支援の中核を担うのが「ネウボラ」です。ネウボラとは、「アドバイスの場」という意味で、妊娠期から就学前までの子どもと家族全体をサポートする総合的な支援システムです。

ネウボラの特徴は、以下の通りです。

  • 妊娠期から就学前まで継続的にサポート
  • 子どもの健康だけでなく、家族全体の心身の健康をケア
  • 専門家チームによる多角的な支援
  • 利用率はほぼ100%
  • 全国に約850カ所設置

ネウボラの特徴は、単に子どもの健康診断を行うだけでなく、母親、父親、きょうだいを含めた家族全体の心身の健康をケアすることです。妊娠期間中は8-9回、出産後は子どもが小学校に入学するまで15回ほど定期的に通います。

担当制を取っているため、同じ保健師が長期的に家族をサポートします。この「ネウボラおばさん」と呼ばれる担当者との信頼関係が築かれることで、問題の早期発見や予防、適切な支援につながっているのです。

育児パッケージ|全ての赤ちゃんに贈られるサステナブルな贈り物

フィンランドでは、出産時に「育児パッケージ」か現金170ユーロのどちらかを選択できます。多くの家庭、特に第1子を迎える家庭では育児パッケージを選ぶそうです。

育児パッケージには、ベビー服やケア用品など43点(2022年版)が含まれています。箱自体も赤ちゃんのベッドとして使えるよう設計されており、マットレスや布団も付いています。

興味深いのは、この育児パッケージが単なるプレゼントではなく、妊婦健診の受診率を上げ、その後の家族ケアにつなげる狙いがあるという点です。育児パッケージを受け取るためには、ネウボラで検診を受けることが条件になっているのです。

パッケージの中身は男女共通で、サステナブルな製品が増えていることも特徴的。これは、生まれてくる子ども全員への社会からの平等な歓迎のメッセージとなっています。

育休制度|ジェンダー平等の育児休業制度の概要

2022年8月から新しい家族休業制度が始まりました。親が2人いる場合、320日(勤務日)を均等に分けられるようになったのです。これは、親の責任と喜びを平等に分かち合い、職場や賃金面でのジェンダー平等を促進することを目的としています。

フィンランドでは「イクメン」という言葉はなく、男性が子育てに参加するのは当たり前とされています。父親の方が母親よりも子どもと過ごす時間が長い家庭もあるとのこと。

また、やむを得なく離婚・別居を選択した夫婦間でも、両親で協力して子育ての責任を果たすことが当たり前の価値観になっています。

子育て支援が充実しているフィンランドでも下がる出生率

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ここまで見てきたように、フィンランドの子育て支援制度は非常に充実しています。しかし、これだけ手厚い支援があっても、出生率が激減しているのです。

統計データで見るフィンランドの出生率の低迷

フィンランドの合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に出産する子供の人数)は、2010年の1.87から2019年には1.35まで低下し、2023年の速報値では1.26までさらに下降しています。これは、日本が2022年に記録した過去最低値1.26と同水準です。2010年以降、フィンランドの出生率は日本を上回るペースで急降下しているのです。

20代女性の出産率減少の背景

フィンランドの出生率低下の主な要因は、20代女性の出産率の激減です。2010年と2022年を比較すると、20~24歳で58%減、25~29歳で43%減となっています。第1子の出産年齢が上がることで一生のあいだに産む子どもの数が減るとともに、結果的に生涯子どもを持たない選択をする人も増えているのです。

経済的不安定と家族形成の遅れ

20代女性の出産率低下の一因として、若者の雇用不安定化が挙げられます。フルタイムの仕事に就けない若者が増加し、リストラの不安も大きいことから、家族を持つことにためらいがあるのです。都市部の住宅費高騰も同時に進んでおり、若年層の家族形成抑制に拍車をかけています。

ライフスタイルや家族観の変化も無視できません。「誰もが子どもを持つ人生」が当たり前ではなくなりつつあり、20~59歳の男女の15%が「子どもは欲しくない」と回答しています。自分のキャリアへの影響を懸念する声も聞かれ、仕事と家庭を両立する難しさを、フィンランドの若者たちは抱えているのです。

フィンランドの課題から見る効果的な子育て施策とは

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子育て支援の充実はもちろん必要不可欠ですが、フィンランドの事例から、子育て支援の充実だけでは少子化対策として不十分であることがわかりました。出生率向上のためには、若年層の経済的安定や、ライフスタイルの変化に対応した柔軟な支援が求められます。

例えば以下のような支援が考えられます。

  • 地域企業と連携した若者向け安定雇用の創出
  • 空き家を活用した若者向け低家賃住宅の提供
  • 地域の特性を活かした魅力的な子育て環境の整備
  • 結婚・子育てに関する価値観の多様性を尊重した啓発活動

地方自治体として子育て支援策を考える際は、単に予算を増やすだけでなく、地域の実情に合わせた持続可能な支援体制を構築することが大切です。そしてすでに結婚している世帯だけでなく、若者に「これから家族を持ちたい」と思わせる総合的な施策が必要でしょう。

本質を見据えた持続性がある子育て支援を

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子育て支援は、未来を担う子どもたちの健やかな成長と社会の発展を支える重要な投資です。しかし、フィンランドの経験が示すように、制度の充実だけでは少子化対策として必ずしも十分とは言えません。

大切なのは、目先の数字にとらわれることなく、長期的な視点に立って、地域の実情に合った独自の支援策を模索し続けることです。

充実した制度と手厚いサポートを提供しながらも、出生率低下という課題に直面しているフィンランドの事例を参考として、ぜひお住まいの地域のヒントにしていただければ幸いです。

【参考資料】
フィンランドの子育て支援|Finland Abroad|2024
なぜこうも違う?フィンランドの子育て支援|東洋経済オンライン|2016
「フィンランドの出生率1.26へ激減」子育て支援では子どもは生まれなくなった大きな潮目の変化|Yahoo!ニュース|2024
「出生率1.35」手厚い国フィンランドに走った激震 1990年から2014年までは1.7を維持していた | 子育て | 東洋経済オンライン|2022
「異次元の少子化対策」が逆に少子化を進める理由、フィンランドの失敗に学べ|ダイヤモンド・オンライン|2023